撮影日前日。
監督から来た連絡で大体察した。
予定していた演出をごっそりと削る羽目になり
私が頼まれていたロゴも美術も無に帰した。
ただ、良くなるようにと夜な夜な作った美術は、
使われないだろう、
気を遣って使う場所を探してくれたようだったけど
無理をして使われるくらいなら、返してくれていいと伝えた。
これは、後輩に渡す前に撮っておいた写真。
フリルリボンも、小さなちょうちょリボンも
彼女が気に入る色と形にしていたのにね。
ミシン糸とグルーガンで作った3弾フリル。
可愛いのにね。
使われないんだって。
そのまま捨てられてしまうだろうか、
飾る場所もなく、ゴミになってしまうのか。
返ってくると良いな、
作ったものはいつだって、
返ってこないことを想定して送り出すけれど
それは使ってもらえると信じているからだ。
使ってもらえないままなのなら
手元で別のものへと生まれ変わらせてあげたい。
徹夜で頑張ったことはひとつも残らなかったし
きっとこれからも振り回されるだろう。
明日の撮影は、私はいかないけど
きっと後輩や監督たちは、土壇場の変更に悩まされるだろうし
本人のトークスキルのなさに盛り上がりがなくて
頭を抱えることになるだろう。
でもそんなこと知ったことじゃないな。
今は、ただ行方を失ったリボンのことばかり考えている。
悲しいのかもしれないし、
空しいのかもしれない。
どちらにせよ、報われない思いは辛い。
=遊兎=