Cry for the Moon

哀しがりの黒猫のひとりごと。

どこまでも続く田園に

実家へと向かう電車は、

どんどんと懐かしい景色を見せてくれた。

 

広がる田園、

低い雲に、緑が茂る山々。

いつも眺めていた景色が窓の外にあると

なんだか不思議な気持ちになる。

f:id:youxxxme:20230830205258j:image

長い道中、一睡もできなかった。

祖母についての連絡はなかった。

大きな駅まで、父と母が迎えに来てくれる約束をしていたから

電車の遅延状況や、進行具合を乗り換えのたびに知らせていた。

その都度、父も母も返信をくれた。

 

淋しそうな顔をずっとしていたのかもしれない。

彼は手を離さないでいてくれたし

東京駅での待ち時間の間に

父が好きだと言っていたお店を見つけたら

お土産をわざわざ並んで買ってきてくれたりした。

 

無事に福井へ到着。

3年半ぶりの帰省は、まず駅の大工事に驚かされることになった。

よく言っていた駅のお土産物売り場もすっかりなくなっていて

駅のロータリーも綺麗になっていた。

通学に使っていた私鉄の駅舎も随分変わっていたし

タイムスリップしたみたいな気分だった。

 

母も父も、少し痩せた。

というか、年齢を重ねたからなんだと思う。

特に父は、恰幅の良い人だったから

手足が細く、刻まれた皺が目立っていて

小さな頃ぶら下がって遊んでくれた力持ちの父の思い出とは

かけ離れた腕をしていた。

 

3年半前はそんなこと、感じなかったはず。

たった3年だけれど、あまりに大きく感じた。

 

自宅への道を、父の車に乗りながら

いろんな話をして進んだ。

帰宅前に、よく行っていたラーメン屋さんでご飯を食べた。

私が食べたいと言っていたから、リクエストに応えてくれた。

特段美味しい店なわけではないけれど、

やっぱり小さな頃から食べていた味は、ソウルフードみたいなもので

地元に帰ってきたなあ、と思わせる味だった。

 

食事の場には姉も合流していた。

姉は私と目を合わさず、ろくに会話もしない。

もちろん旦那にも話しかけようとはせず

真っ先に私たちとは別のテーブルに座った。

時折、飛んでくる嫌味だけははっきりと聞こえた。

 

まあ、なんとなく予想していたことだったけれど

姉にとっては、私は要らないものなんだよなあ、と

改めて実感させられる。

この3年間でより一層、溝が深まったような気がする。

こちらからのアプローチは全部ムダだったなとも思う。

 

両親のために仲良くしたいと思っていても

姉がそう思わない限りは

一生このままなんだろうなと思う。

 

実家に戻ると、愛犬の声がした。

わんわんと甲高い声が家に響くのが嬉しかった。

前にあったときは、まだパピーだったあずきは

すっかり成犬になり、

一丁前に人見知りをしてた。笑

実家にいる間に、また仲良くなれるかなあ。

 

両親へお土産を渡した。

彼が買ってくれたものも喜んでくれた。

もちろん、あずきにも玩具と新しいお洋服をあげた。

玩具はすぐに分かるようで、投げては拾ってを繰り返してた。

ちょうどいいサイズ感だったのか、今まで贈ったものの中で

一番の食いつきだったかもしれない。笑

店頭でサイズ感や肌触り、鳴き笛の調子なども

厳選してきた甲斐があった。

 

祖母の様子は分からないそうだ。

お盆時期で病院も人手不足だし、

面会も予約制で多くの人は入れないらしいし

そもそも呼吸器に繋がれている状態で

よそから来た私たちが会うのは、リスクが高すぎるんだろう。

会いに行くことはできないと暗に言われた。

 

母に、昨日作った巾着を手渡した。

母は少し涙ぐんでいた。

ちゃんと入れておくね、と大事にしまってくれた。

もしものことがあったら、

その日の新聞に載ってる株の情報欄を切りぬきで

一緒に入れてあげてねと言ったら笑っていた。

 

 

移動中も眠れなかったし、

連日寝不足が続いているから、

パタンとすぐに眠れるかと思ったのに

全然眠れそうになかった。

明日はお墓参りと母方の祖母の家に行く予定なんだけど

元気な顔で会いたいから、ちゃんと眠りたい。

 

=遊兎=