Cry for the Moon

哀しがりの黒猫のひとりごと。

心は何処に置くべきか

プレゼントした玩具で遊んでくれている我が妹君。


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パイナップルの玩具なんだけど、

ちょうど口にくわえやすいサイズで、

我々も投げやすい。

 

あずきは相変わらず、ボール遊びが好きで

暇があるとすぐにおもちゃを持ってきては投げろと訴えてくる。

私も彼も散々付き合ったけど、延々やるらしい。

家族たちも大変だそうだ。笑

 

*******

父方のお墓参りに行った。

彼を連れて夏に帰省したのは初めてだから

彼がお墓参りについてくるのも初。

実家のお墓は、地域では一番大きなお寺の墓地にあるから

彼が見たらびっくりするだろうな~と思っていたけど

案の定楽しそうだった。

セミの声がうるさいほどで、

日陰にいないとくらくらするほどの暑さだった。

 

お墓に手を合わせながら、亡くなった祖父のことを思い出していた。

母と祖母が同居をして毎日喧嘩していたとき

いつもお墓やお仏壇に手を合わせながら

祖父に話しかけていたのを覚えてる。

 

祖母の容体が悪くなってから、

そのことを思い出しては、苦しくなったりしていた。

祖父が迎えに来たんだろうか、なんて思う。

同じく亡くなった愛犬も天国で元気にしているだろうか。

祖父と仲が良かったから、きっと一緒に暮らしてくれているだろう。

妹がすくすくと成長していること、

父や母をペットロスから救い、笑顔を増やしてくれていること

そして、今も亡き愛犬の写真を飾っていることを報告した。

ずっとずっと見守ってほしいと願った。

 

彼は宗教の違いや、地域差による作法の違いで

少しわたわたしながら

私の傍で同じように振る舞ってくれた。

信心深いわけではないけれど、

祖父たちが大切にしていた宗教を

同じように大切にしてくれる姿勢が嬉しかった。

 

*******

母方の祖母の家にも向かったけれど、

みんな出払っているようで誰にも会えなかった。

お土産と書置きを置いて、

お仏壇にだけ手を合わせて帰宅した。

夜になっておばあちゃんから電話があった。

耳が遠くなって、面と向かって話すと大変らしいとだけ聞いていたから

懐かしい声を聞いたら、胸がいっぱいになって苦しかった。

母方のじいちゃんも、痴呆が進み

物事を覚えていられなくなっているらしい。

 

私にとって二人は、いつも元気で

大好きな祖父母だから、

元気でなくなっていくのを感じるととても怖かった。

 

おばあちゃんの声は、少し明瞭さを失っていて

きっと耳が聞こえにくいからだろう、

発話が難しくなっていくんだと思う。

いつもだったら、おじいちゃんにも電話を代わってくれるのに

電話口はおばあちゃんだけだった。

電話は会話だけになってしまうから、

記憶するのが難しいんだろう、

そもそも私のことを思い出すのも難しいかもしれない。

私のことも、おじいちゃんのことも傷つけないように

配慮をしてくれたんだと思う。

それがまた辛くて、苦しかった。

 

*******

姉は相変わらず、酷い態度だった。

こちらが話しかければ返事はするものの、

攻撃的な口調は変わらないし、

口を開けば、他人をなじる様なことや

非難するようなことばかり言った。

 

その口調が危篤状態の祖母と重なった。

姉はあまり祖母のことが好きじゃなかったんだと思うけれど

その血を濃く受け継いでいるのも、姉本人だと思う。

姉は絶対に認めないだろうけど。

 

「あんたは言われたことを何もしないし、

 いうことを聞かない奴だった」と

彼の前で私をなじった。

 

きっと学生時代のことを言っているんだろうなと思ったけれど

私は正直、両親や先生の言うことはよく聞いていたし

なんならかなり良い子に育てられたと思う。

言われたこと以上をやっていたし、

そのうえで自分の好きなことも追及していた。

 

結果として、両親が望んだ道には進まなかっただけで

そのために自分の中で折り合いもたくさんつけた。

 

それでも、姉の中では

私は言うことを聞かない我儘で、嘘つきで

性悪な子供として刻まれているんだろう。

 

姉に会うたびに落胆する。

小さな頃、私は姉のことが好きだったと思うし

よく真似もした。

姉は格好良い人だったはずなのに

いつからか憧れなくなった。

姉のようになりたくないと、姉が選ばなかった道を選ぶようになった。

姉が通ったルートを嫌い、姉の知らない世界を見るようになった。

 

姉は、私以上に真面目で責任感が強い。

本当はやりたかったことがあったのかもしれないけれど

それを諦めて、今の道を選んだのかもしれない。

仕事も、住む場所も、結婚も。

なにもかも、自分の思い通りにはならなかったのかもしれない。

 

でも、それは私のせいではないと思う。

そう思いたい。

確かに私は姉の選ばなかった道を選んできたけれど

それは、私が進みたい道を自分で切り開いたからだし

周りだってちゃんと説得した。

誰かに救われたいと願って待つようなことはしなかった。

私は私を救うために、自分の足で自分の手で

やっと生きられる場所を見つけた。

 

それが、

公務員という職でなかったこと、

産まれた土地でなかったこと、

結婚をして東京へと来たこと、

全部、私が決めたこと。

 

今の私と姉は対極にいるんだと思う。

だから許せないし、憎いんだと思う。

姉は私が心底嫌いなんだろうなと思う。

 

同じ血を分けた姉妹なのに

こうも違う人間になるのかと

他人のことのように思う。

 

姉にこの話は絶対にしないけれど、

きっと姉は「被害者ヅラをするな」と言い切るだろう。

姉にとって、私は悪だから。

 

あんたなんか生まれてこなきゃ良かったのにと言われた幼少期。

本当は男の子が欲しかったのに、妹が生まれて

家族はみんながっかりしてるんだと言われたのも覚えてる。

しのうとしてしねなかったあの夜に

手間ばっかりかけさせやがってと言われたのも覚えてる。

友人と信じていた子に酷いことをされたあの日も

あんたが選ぶ友達なんてどうせ碌な奴じゃないと言われたことも。

 

産まれてこの方、姉に愛されたことなんてないんだろうなと思う。

ずっとずっと姉にとって私は

いない方がいい存在だってことくらい

分かっているつもりなんだけどな。

 

それでも、期待してしまう。

いつか昔みたいに笑ったりしてくれたらなあって。

尊敬できる姉に戻ってくれたらって。

 

そうさせてしまったのが私なんだって

私のせいでこうなったって

姉は言うんだろうか。

暗に言っているもの同じようなものだ。

 

実家にいると針の筵にいるみたいだ。

戻らなければ、薄情者と言われ

戻れば邪魔だと言われる。

 

居場所なんてとうにないのに、

もう戻れない「あの頃」を探してしまう。

 

「あんたを含め、あんたが行ってた学校なんて

 みんな発達障害の塊だろ」とも言われた。

 

うん、知ってる。

私自身、そう思ってる。

だけど、言葉にしていいことではないと思う。

仮にも福祉に従事する人間が言っていいことではないと思う。

 

私たちは歪で、社会に溶け込むことができなかった学生だったけれど

全員が全員を尊重していたし、

そんな欠けたところに名前を付けることなんてせずに

助け合って、認め合って生きていた。

傍から見れば馬鹿らしい仲間意識だったのかもしれないけれど

私も、みんなもちゃんと卒業して、社会の1つになった。

”普通”ではいられなかったかもしれないけれど

あの場所で一生懸命学んでいた時間は、

きっと他の場所では得られない時間だった。

 

そんなことすらも、汚されなければいけないのかと思った。

普通がそんなに偉いのかとも思った。

 

心がぐしゃぐしゃになるたび、

言い返してぶちまけてしまおうかとも思ったけれど

空しくなるだけだから言わなかった。

 

姉とはもう言葉も考え方も違う。

心に何かが巣食っていると思った方が楽だった。

 

彼はこんな私を面白がってくれるし

大切だと言ってくれる。

普通なんかよりずっと良いと言ってくれる。

理解者がいる、それだけで絶対に傷つけられない場所ができる。

 

 

実家に帰れない間、いろんなことを考えていたけれど

こういうことと向き合わなければいけない瞬間が来ると分かっていたから

帰省するのが怖かった。

逃げられるなら逃げたいけれど、

そうしたところで、何も解決しないし

でも、向き合ったところで解決もしない。

どっちに転んでも地獄だから

ちゃんと面と向かって刺されようと思う。

刺し返すことはしない、

同じ土俵には上がらない。

 

幼い頃、尊敬し信頼していた姉を

傷つけたいとは思わない。

 

=遊兎=