Cry for the Moon

哀しがりの黒猫のひとりごと。

狡いんだよな、いつもいつも。

チェシャからふと、LINEが来た。

くだらない話。

その線引きがいつも上手い。

 

10年間の話をした。

きみがいなくなった時のことや

きみの家族のこととか。

 

いなくなったとき、

見つけたら絶対にぶん殴るって息巻いてたんだよ、って

やっと言った。

きみは笑ってて、

そのために痩せないと、と言ってた。

 

いつか会う日が来るんだろうか、

またきみを見る日が叶うんだろうか。

そんな日が来たら、きっと私は泣いてしまうし

何をするか分からない。

 

心が弾けたあの日、

つくづくきみが遠い地にいることにほっとしたんだ。

会える距離にいたらきっと、

私は私の幸せを投げ出して

落ちるとこまで落ちただろうから。

 

私は自分のことをあまり話さない。

そうなったのはいつからだったかな、と思ったけど

チェシャも同じ事を言っていた。

 

大人になると自分のことを話さなくなるけれど

きみは加齢とは違う理由で話さないから、と。

 

そうだね、私は

誰かの記憶に残らないようにしてるのかな。

 

そう話したら、きみが調子に乗ったことを言って

私は笑った。

 

きみの記憶に残るのなら本望だ、

あの時の私ならそう言う。

きみだけでいい、と。

 

きみとの関係が居心地良いのは

きっときみが私を信じてるからだ。

あのときのままでいさせてくれるから。

 

悔しいなあ、

いつまできみを想ってしまうんだろう。

恋愛感情なんてとっくにないのにな。

大切で失えない、この感情に名前入らない。

 

狡いのはお互い様。

 

いつかの約束すらもはぐらかしてしまう。

怖いんだ、きみが目の前に現れたとき

自分のすることに自信がない。

 

きみに手をとられたらきっと

一緒に逃げ出してしまいそうで。

 

そんな現実は二度と来ないのに、

もしもの話が得意なきみの前では

いつも感情が揺さぶられてしまうから。

 

きみはチェシャ。

ここはまだきみの庭の中?

 

=遊兎=